90年代リアリズムが生んだもう一つの世界。アンダーグランドの誕生! 

80年代かつてアイドル歌謡的なファンタジーの時代だったのが、一気に現実にめざめてしまったのが90年代だから、当然その反動はおこる。ドラマやアニメ冬の時代とかいわれ、荒唐無稽さや夢をウリモノにしたファンタジーは、リアリズム全盛の時代あっては色あせるかこっけいなものに見えてくる。しかし、ニュースから垂れ流されるような、「終わらない退屈な日常」すごすだけでは満足できるはずがない。想像力のもてあましたエネルギーはどこへいってしまったのだろうか。それがアンダーグランドだった、、、んではないかな。


90年代リアリズムが支配力を強める一方で、アンダーグランドなメディアや表現が増え始めたような気がする。90年代に流行ったような、レクター博士シリーズみたいなサイコサスペンスとか、多重人格モノとか、いわゆるサイコブーム、リアルな日常の見えない部分という意味で、いわゆるアンダーグラウンド。「エヴァンゲリオン」にしても人類の存亡が、主人公シンジの内面問題によって決着、いわゆるサイコな作品という面もあって、いかにも90年代的。


メディアの倫理規定が問題となりR15だとか18だとか、、青少年保護育成条例でもって有害図書の選別などなど、エロ、グロ、バイオレンスといった過激さをうりにしたという意味でのアンダーグランドも増える。旧ソ連の崩壊によって社会主義というファンタジーが崩壊して、弱者切捨て的な資本主義に向かうし。不良債権の泥沼から抜け出せない不景気という時代背景ともリンクしてると考えると、なんだかそうとう病んでいた時代だなと記憶するwww


サブカルショップとかエロゲー、同人誌を扱った店とかも増えてくる。オタク=萌え=アキバ系=エロ同人誌、みたいな状況がこのころ発生。本来子供がみるアニメ絵にセクシャリティを持ち込むという、のがいかにもアングラパワー。こう考えると、いまの「オタク」=「萌えオタク」みたいな状況というのは、どうも90年代リアリズムとアンダーグラウンドが生んだんでないかって気がする。


リアリズムの時代には、特撮モノや、SF、アイドル歌謡、学園ラブコメ、とか架空の世界のパワーがやけにしぼんでしまう。それがアングラとしての「萌え」に向かわざるえなかった90年代的な時代背景が重なっているとしか思えない。いまでこそ、アニメ絵にちょいエロとかセクシャリティを持ち込むのが、子供向けのテレビアニメですら一般的になってしまっているけど、それって90年代のアングラが生んだ表現だろう。


インターネットが普及して、「もう一つの日常」として掲示板コミュニティが誕生。かつて、「あめぞう」という掲示板はアングラだったそうな。(かつての2ちゃんねるみたいだったらしい)「危険」「無法地帯」という初期のインターネットのイメージはアングラそのものだし。


スラムダンクは90年代の名作とされているけど、バスケ部入部から県大会という高校生活を描いた超リアリズム。97年だかヤンキー、スポーツものでリアリズム路線の少年マガジンが、部数で少年ジャンプを抜くというのも、やっぱりこの時代がリアリズムだったからだろうな。(02年だったか、ともかく00年代にはそれ再び逆転して、00年代ファンタジーに戻る。)


といった具合に、なんだかリアリズムとアングラが多い。ファンタジーは子供向け、リアリズムは大人向けという区分で、かつて子供だった団塊ジュニアが大人になってしまった。だからマーケットの主力製品がそっちにうつったという、だけでは90年代のリアリズムは説明できないでしょう。前々回の記事に列挙したような、リアリズムの波があらゆるジャンルであったわけで。


80年代がアイドル歌謡的なファンタジーを時代の特徴とするなら、90年代はリアリズムとアングラだったんでないか? 



※かつて「E.T」や「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」(製作)をとっていたスピルバーグが、90年代には「プライベート・ライアン」「シンドラーのリスト」といったリアリズムものをとるようになり。また、00年代(ゲーム・CG的)ファンタジーでは、スターウォーズのEP.1〜3も、ほぼ00年代になってから公開されたり、「インディ・ジョーンズ」もいまさらのように新作が作られる。といったように、周期的にファンタジーとリアリズムがいれかわっている気がする。