90年代はどこへいっても彼女のにおいがした

元AV 女優で元タレントが亡くなった件。引退したときも「あ、そう」くらいで、ファンでもなんでもなかったけど、正直いって死亡を伝えるニュースでちょっとショックだったよ。ネットのニュースでは自殺か、病死ということについての憶測をまじえた記事が次々にアップされて、「どっちなの?」と気になって、なんどもネットのニュースを見てしまう。


いずれにしても、想像通りというか精神不安定だったらしいことは書かれてた。医師に処方された薬を飲み続けていたせいで薬物中毒だった、とか、化粧品会社に話を持ちかけられて金を騙し取られたとか、知られたくない弱みを握られている人にゆすられていたとか、タレント活動と、170万部のベストセラーで稼いだお金もどっかに消えてしまって、金銭問題もかかえていたとか。交際していた担当編集者にフラれたとか。ひょっとしてエイズだった? とか。ドロドロした話がでてきて、かるくめまいがしますな。いや、そういったゴシップ記事には興味がないんだ。


記事を読んでいて、いまでは伝説となってしまった番組「ギルガメッシュナイト」にふれていて、思い出した。当時、自分の部屋にはテレビがなくて、悔しい思いをしたww とか、「Tバック」は誰しも耳にしたことがあるよね。ともだちとブリーフとか競泳の水着を「Tバック」のようにして、遊んだりしたよね? 紅茶のほうも、はずかしくて「Teaパック」といいづらかったよね? そういった思い出と記憶が、一緒になって消えていってしまう感じ。自分の一部分が、知らないうちにすーっと消えて、いつか自分自身も跡形もなく消えてしまうんだろうな、という寂しい感じ。


当時、バブルからの急転直下でもって、みんなが「いったい現実になにがおこっているんだ?」と気になり、テレビも、いま世の中で起きていることを説明するような、バラエティにとんだキャラクターをそろえたがった。(こういうところがリアリズム)そういう文脈でオタクキャラがメディアに登場したり、「AV出身だけどこういうキャラって、いてもいいよね」みたいにとりあげられ、同時に寛大さみたいなのがテレビにあった。そもそも、AV にしても、OVAとか、アイドルのビデオにしても、ビデオを媒体にしてマニア向けの商品がでてきたのだって、80年代後半くらいから?? 世間的にもまだ目新しい存在。また、さらに90年代はテレビが盛んにコギャルとりあげたが、その元祖コギャル、コギャル代表みたいなキャラのタレントとして定着して、2007年引退するまでバラエティ番組を中心に活躍。彼女なんだか、90年代のごちゃごちゃしてて汚い現実の写し鏡だったみたいにも思えるね。


詐欺でつかまった某音楽プロデューサーといい、90年代活躍したかつての有名人がたてつづけにこういう形で、世間をにぎわせてくれるというのは、なんかね、でも諸行無常なんだよな。心にポッカリ穴が開いたこの感じは、どこかの誰かがうまく書いていてくれることだろう。90年代の残滓が、また一つ消えていく。