バトルロワイアル〜ライアーゲーム

2007年にやっていた深夜ドラマで、「ライアーゲーム」というのがけっこうな視聴率があった。その作品のシーズン2が2009年〜今年の初めまでを放映していた。最終回は映画になって今劇場公開されているはず、ちゃんとやっているのかな。このドラマの原作が週刊ヤングジャンプ不定期連載している漫画なんだけど、こっちは見てない。ドラマのあらすじっぽいことを言えば、大体こんな感じ。


主人公の少女神崎ナオに突然一億円とゲームへの招待状が送られる。この一億円はゲームの資金で、ゲーム期間中に参加者から奪われなければそのまま返却できるが、奪われたら負債となってしまう。また、ゲーム参加者から奪った分は自分の賞金とすることができる。という簡単なルールだ。たまたまかつての教わっていた教師がゲームの参加者で「これはゲーム主催者がわの詐欺だよ」といわれ、二人の一億円を奪われないように銀行の金庫に入れるようにもちかけられうっかり信用して預けたところ、教師は自分の金庫にいれてナオの一億円を奪ってしまう。「ひどいじゃないですか」「だってナオちゃん、これはライアーゲームだよ」ナオは天才詐欺師・秋山の手を借りて一億円を奪い返せるのか? というのがこのゲームの始まり。


ゲームの参加者は相手をだますことによって、勝者になり次のゲームへ勝ち進まなければならないというのがルール。買ったものは賞金を得て、負けたものは負債を負う。賭博ゲームという見方をすればもっと以前から連載していた「賭博黙示録カイジ」っぽくもあり、この作品を意識して作られているんだろう。カイジにもだまし合う協力する、ということが作品テーマにもなっていたから、設定がかなり似ているのだが、「ライアーゲーム」で興味深い特徴となっている、主人公オナの哲学がある。「みんなで助け合えば、誰も得しないけど、損もせずにすむ」というものだ。


互いに嘘をつくことができ、「奪わなければ、奪われる。」という状況で、だまし合い奪い合うことは必至ともいえるのが、人間の悲しい性だったりするなかに、ナオはゲームで獲得したポイントを平等に分配したり、敗者がゲームで損をしないように画策するのだ。


ここで思いつくのが、2000年前後に社会現象といえるまでのブームというか、よく名前がとりあげられた「バトルロワイアル」だ。学校の生徒が爆弾のついた首輪をつけられて「殺しあわなければ、殺される」という状況の下、殺戮ゲームを繰り広げていく。登場する生徒の人数が大量だったため、藤原竜也栗山千明ほか。。。。この映画出身の俳優がいっぱいいるんで、それを探すのもけっこう面白い。


規制緩和、市場競争をモットーにした小泉行革のころでもあり、いわば時の首相が「これからの時代、食うか食われるか」というのが露骨に喧伝していた時代だ。巷ではリストラ、能力主義とか勝ち組・負け組みだの騒いでいた社会背景だけに、「バトルロワイアル」は血みどろのバイオレンスな映像ばかりだけでなく、テーマとしてもインパクト大だった。


中国好況でもって輸出がのびたのと、金融市場に競争原理を取り入れるという旗印のもと、外資がバブリーな資金をもたらしたのとかで、ITバブルがあったり景気のよさが部分的にはあったのはだろうけど、それは小泉行革とは無関係にもおこったものだ。「改革なくして成長なし」といったスローガンも、地方分権という名の地方の切捨てだとか、非正規雇用の拡大とか、デメリットをつきつけるもので、どっちかといえば、富を再分配するといった政治的な役割を放棄するために、都合よく利用した口実でしかないのだ。思えば、あのときの小泉首相の支持率はいったいなんだったのかな。サブプライムローン問題、リーマンショック以降先の見えない中、小さな政府、市場原理主義新自由主義がめざす先にあるのは何??


かつての殺し合いの「バトルロワイアル」で突きつけたテーマは、「ライアーゲーム」へと引き継がれたのかどうかはわからないが、神崎ナオの哲学は暗闇に包まれた未来に一筋の光明をもたらすかもしれない、と思うのだ。